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聴いた、観た、買った 〜朝からRock 編



2007-9-14:三曲目と四曲目だけなら一日中聴ける〜《Systematic Chaos》に魂を抜かれる快感

Systematic Chaos
Dream Theater
B000PFUAO6

夏休みでタワレコ行く暇もない、と思って i-tune store を見たら、Dream Theater も Rush も1,500円で買えるので、先日二枚とも配信で買いました。お店で一枚買うのとそんなに変わらない、なんて自分に言い訳しながら。

ところがわたし、いっぺんに二枚なんて聞ける人間じゃないと、買ったあとで気がつきました。買ってすぐ、時間をみつけてひたすら"Systematic Chaos" を聴いて、というか、四曲目ばかり繰りかえし聴いて、その興奮をそのままブログに書きました。ともかく、興奮してるから書いてることはめちゃくちゃなんですが。

その "The Dark Eternal Night" が圧倒的にすごいのはいうまでもないんですが、じき、三曲目の "Constant Motion" が四曲目と同じ作り、もうちょっと四曲目よりポップで、四曲目のようにリズムが展開していっているわけではないけれど、四曲目と同じようにシンメトリーなふたつの主題がそのまま全体を貫いていっているのに気がつきました。

三曲目も四曲目もともに重い曲です。つまり、音の密度が極めて高く、緊張度がものすごく高い。やっぱりここまでものすごい二曲をアルバムに入れてしまうと、全体のバランスは悪くなってしまうものなのかもしれません。これに拮抗しうるのが、一曲目ぐらいしかなくて、あとはどうしても物足りなく感じたり、なんかちがうなあ、みたいに思ってしまう。

"Constant Motion" も四曲目と同じ、ふたつの主題を持っています。ところがこの曲のおもしろいのは、ふたつの主題のリズムの性格がちがうこと。第一主題のほうは、縦にザクザク刻んでいくリズムで、第二主題は横にうねっていくリズムなんですね。このふたつの対立が、どんどん緊張を高めて、第一主題を激しくしたような統合部に、早急に、乱暴に呑みこまれていく。だから、形式の上では解決するんだけど、緊張感は残ったままです。

この第一主題はギターでもキー・ボードでもボーカルでもいろんなふうに変奏されていきますが、主題の性格が一番はっきりしているのは、四曲目と同じく歌のメロディではなく、間奏のところです。曲が始まって四分目あたりで出てくるベースとキーボードのユニゾンのリフ、これを土台にギターソロがかぶさっていくんですが、このリフが、単にリフというだけでなく、第一主題のハイライトになっています。つまり、このアルバムの三曲目と四曲目では、歌のメロディがまずあって、そのおまけとして間奏で楽器演奏者の見せ場があるのではなく、間奏という最大のピークに持っていくために、主題がさまざまに提示されていく。ボーカルもここでは単に楽器のひとつです。つまり、ドリーム・シアターはボーカルつきのインストゥルメントのバンドになっちゃってる。

このベースとキーボードのユニゾンは圧巻です。なんというか、胸のすくような腕の冴え、というか。それをひとりじゃなくてふたりがやっているところが、ただただすごい。この部分、ギターが表で華々しいソロをやってますから、わたしのようにひねくれた人間じゃなきゃ聴いてないのかもしれません。ただ、このふたりは、妙技を披露するというより、リズムのおもしろさを見せてくれるんです。ここまでボーカルを含め、この主題は何度も提示されてきたけれど、それも全部、ここに至るまでの伏線なんだ、というのがよくわかります。もちろんこれにかぶさるギターの速弾きも、ほんと、ケレン味たっぷり、だけどどこまでいってもペトルーシは余裕があるから、スポーツでもやってるみたいな爽快感がある。息が荒くなってハアハア言ってるようなところはどこにもない。

ポートノイのドラムは、以前より少し、軽くすべき部分が軽くなってきたかな、と思います。基本的に重くていい音を出す人ですが、ピアニシモの音が前よりも軽くなってきた。とくにシンバルを、ふれるかふれないかで細かく十六分音符を刻んでいくところとか、ひとつひとつの音の確かさが揺るがないだけに、いったいどうしたらこんなことができるんだろう、って思います。あと、あのおっそろしく早いバスドラの連打と。どうやったらあんなにフットペダル、小刻みに踏めるんだろう。わたしには見当もつきません。

ただ、この第一主題、ラブリエさんのボーカルがちょっとつらいんです。バックコーラスのポートノイ、決してうまくない(地声でがなるのはやめてほしい)んですが、さすがにいい縦のリズムで歌ってます。ラブリエさんも一生懸命、それに合わせようとしているのはわかります。だけど、基本的にこの人のリズムは横だし、発声も縦にザクザク刻んでいく発声じゃない。もう発声というか、歌い方が固まっちゃってるのかもしれません。この第二主題のうねるような部分にしても、相変わらずのラブリエ節で歌っちゃってる、ドリーム・シアター自体は、もう《 Images & Words 》からはるか彼方に来てしまっているのに、この人だけは《 Images & Words 》、というより《 Awake 》かな、あのころからあまり変わってないなあ、という感じがします。この第二主題もボーカルが始まると、ラブリエさんにとっては手慣れたリズムだけに、昔懐かしい情景を見せられるように思うんです。だったらいったいどんなボーカルだったらいいのか、だれだったらこんなむずかしい、むずかしいだけじゃない、ものすごい歌が歌えるのかとは思うんですが、ただ、ラブリエさんはそろそろバンドと合わなくなっちゃってるかなあ、って思います。この人は6曲目の"Prophets of War"みたいなのがやりたいんだろうなあ、とは思うけど。

ともかくこの縦のリズムでなによりも重要なのが空白です。シンコペーションの休符の部分、一瞬の空白で、全体がフル・ストップでビシッと止まる快感はもう堪えられない(そこでラブリエさんのボーカルが響いちゃうところがあるから、ちょっといらいらしてしまうんですが)。そうして、この曲がそうやってビシッと終わって、一瞬の間をおいて、四曲目のギターのリフが始まっていくんですから、この緊張感はもうたまらない(逆に、四曲目が終わって、五曲目のイントロの弛緩したようなギターの音が聞こえてくると、こめかみにバッテンが浮かびそうになるんですが)。

三曲目と四曲目だけだったら、わたし、一日中聴いてられますね。確実に難聴になりそうだから、やってみようとは思わないけど。



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