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掲載した翻訳について
ここにはわたしがこれまでブログ上で訳してきた翻訳を載せています。先行訳を部分的に参考にさせていただいたものもありますが、掲載したものは、すべてわたし自身が翻訳したものです。誤訳や文のねじれ、日本語として意味の通じにくい部分などあるかと思いますが、お気づきになりましたら、ぜひお知らせください。

一応Web上で原文が読めるもの、という枠をはめていますが、逸脱しているものもあります。著作権に抵触するものも一部、混ざっていますが、たとえばリリアン・ヘルマンの『ペンティメント』やジョン・チーヴァーの『泳ぐ人』など、いまでは読むのがむずかしい作品を、このような形ではあれ、広く読めるようにしていくことは、ささやかではありますが、意味のあることではないかと思っています。ですから「関係各位」も大目に見てくださったらありがたいなあ(笑)と思っています。

すでに古典として評価の高いものもあれば、短篇のアンソロジーにかならず入っているようなもの、英米での評価に比して日本ではほとんど知られていないもの、語学テキストの定番、あるいは気楽に読めるミステリなど、雑多な作品を寄せ集めています。ご意見、あるいは、こういうのが読んでみたいというご希望などありましたら、検討してみますので、ぜひお知らせください。

▼new issue
サキ
「サキ・コレクション vol.8 〜ああ、勘違い」 … 2011-06-27


 作者名から探す(50音順)

ア行……
◆ジョン・アップダイク アメリカ文学
 『A&P』 人気作品
……2004.11.24
◆シャーウッド・アンダーソン アメリカ文学
 『ワインズバーグ・オハイオ 第一部』
……2005.10.06
 『第二部』……2005.10.22
◆H.G.ウェルズ イギリス文学 ミステリ・SF
 『水晶の卵』
……2007.02.24
 『魔法の店』……2008.09.09
◆イーディス・ウォートン アメリカ文学
 『閉ざされたドア−前編』
……2005.02.08
 『閉ざされたドア−後編』……2005.02.10
 『ローマ熱』……2006.10.10
◆P.G.ウッドハウス イギリス文学
 『階上の男』
……2005.03.18
◆トバイアス・ウルフ アメリカ文学
 『雪の中のハンター』
……2006.03.02
◆ジョージ・オーウェル イギリス文学
 『象を撃つ』 人気
……2005.04.25
 『なぜわたしは書くのか』……2010.01.15
◆ジョイス・キャロル・オーツ アメリカ文学
 『これからどこへ行くの、いままでどこにいたの?』 オススメ
……2008.05.15
◆フラナリー・オコナー アメリカ文学
 『善人はなかなかいない』
……2009.03.14
◆フランク・オコナー イギリス文学
 『わたしのエディプス・コンプレックス』
……2008.07.05
 『天才』……2009.07.25

カ行……
◆トルーマン・カポーティ アメリカ文学
 『ミリアム』 人気
……2007.01.24
 『クリスマスの思い出』……2009.12.15
◆ウィラ・キャザー アメリカ文学
 『ポールの場合』
……2007.03.24
◆シャーロット・パーキンス・ギルマン アメリカ文学
 『黄色い壁紙』
……2005.07.23
◆グレアム・グリーン イギリス文学
 『破壊者』 オススメ
……2004.11.24
 『八人の見えない日本の紳士たち』……2006.02.10
 『パーティの終わりに』……2010.02.18
◆メアリー・ゴードン アメリカ文学
 『手品師の妻』
……2011-04-01

サ行……
◆ジェイムズ・サーバー アメリカ文学
 『ネコマネドリの巣の上で』
……2004.12.31
 『マクベス殺人事件』 ミステリ・SF……2006.07.25
 『たくさんのお月様』……2007.10.05
◆サキ イギリス文学
 『開いた窓』『ハツカネズミ』『スレドニ・ヴァシター』
……2005.05.29
 『話し上手』『博愛主義者と幸せな猫』『立ち往生した牡牛』……2007.05.15
 『ラプロシュカの魂』『マルメロの木』『毛皮』……2008.01.12
 『シャルツ=メッテルクルーメ式教授法』『平和的なおもちゃ』『ビザンチン風オムレツ』……2008.06.06
 『侵入者たち』『セルノグラツの狼』『物置部屋』……2008.09.25
 『メスオオカミ』『ショック作戦』『こよみ』……2009.03.1
 『トバモリー』『モウズル・バートンの平和』『七番目のひよこ』……2010.03.16
 『七つのクリーム入れ』『運命の猟犬』『返品可能で販売中』……2011.06.27
◆J.D.サリンジャー
 『ロイス・タゲットの長いデビュー』
……2010.04.08
◆W.W.ジェイコブズ イギリス文学
 『猿の手』 人気
……2008.02.16
◆ロバート・シェクリィ アメリカ文学 ミステリ・SF
 『危険の報酬』
……2009.01.25
◆シャーリー・ジャクスン アメリカ文学
 『くじ』 人気
……2004.11.17
 『チャールズ』……2006.06.21
 『魔女』……2009.09.18
 『なんでもない日に落花生を持って』……2009.09.24
 『夏の人びと』……2010.08.16
 『ある物語の顛末』……2010.11.19
◆アーウィン・ショー アメリカ文学
 『夏服の娘たち』
……2007.10.19
◆ジョン・スタインベック アメリカ文学
 『菊』
……2007.12.17
◆フランク・ストックトン アメリカ文学
 『女か虎か』 人気
……2006.01.25

タ行……
◆ロアルド・ダール イギリス文学 ミステリ・SF
 『南から来た男』 人気
……2006.09.06
 『羊の殺戮』……2006.11.14
 『番犬に注意』……2007.04.25
 『天国へ上る道』……2007.09.19
 『味』……2008.04.17
 『女主人』……2009.8.13
 『幕開けと悲劇的結末 ―ある真実の物語』……2009.10.23
◆ジョン・チーヴァー アメリカ文学
 『とんでもないラジオ』 人気
……2006.03.26
 『泳ぐ人』……2006.07.19
 『ニューヨーク発午後四十八分』……2009.8.05
 『クレメンティーナ』……2010.07.01
◆フィリップ・K・ディック アメリカ文学 ミステリ・SF
 『変種第二号』 人気
……2009.04.24
 『お父さんのようなもの』……2009.11.07

ハ行……
◆ロバート・バー イギリス文学 ミステリ・SF
 『健忘症連盟』
……2007.07.28
◆オルダス・ハクスリー イギリス文学
 『ジョコンダの微笑』 ミステリ・SF
……2007.08.31
◆チャールズ・バクスター アメリカ文学
 『グリフォン』 オススメ
……2008.11.19
◆ドロシー・パーカー アメリカ文学
 『電話』
……2006.05.12
◆アンブローズ・ビアス アメリカ文学
 『アウル・クリーク橋でのできごと』 人気
……2005.08.15
 『月明かりの道』……2006.05.27
◆F.スコット・フィッツジェラルド アメリカ文学
 『生意気な少年』 
……2011.01.25
◆ウィリアム・フォークナー アメリカ文学
 『乾いた九月』
……2005.10.04
 『納屋は燃える』……2008.11.03
◆アーネスト・ヘミングウェイ アメリカ文学
 『殺し屋』
……2006.12.30
 『白い象のような山並み』……2007.06.13
 『キリマンジャロの雪』……2010.08.16
◆リリアン・ヘルマン アメリカ文学
 『ペンティメント 〜亀』 オススメ
……2005.12.22
 『ジュリア』 人気……2006.04.25
◆エリザベス・ボウエン イギリス文学
 『悪魔の恋人』 ミステリ・SF
……2008.07.27

マ行……
◆カーソン・マッカラーズ アメリカ文学
 『木・岩・雲』 人気
……2005.12.09
 『過客』 オススメ……2006.12.05
 『家庭のジレンマ』……2008.12.06
◆キャサリン・マンスフィールド イギリス文学
 『ディル・ピクルス』
……2007.06.08
 『見知らぬ人』……2008.08.16
◆サマセット・モーム イギリス文学
 『奥地駐在所』
 ……2008.03.15
 『幸せな男』……2008.12.30

ラ行……
◆リング・ラードナー アメリカ文学
 『散髪』 人気 ミステリ・SF
……2006.07.25
 『金婚旅行』……2007.11.05
◆トーマス・リンチ アメリカ文学
 『仕事 ――葬儀業から見た人間研究』
……2005.11.20

アンソロジー
◆ 英語の詩を読む
 その1. アメリカ文学
……2005.03.15
 その2.ロバート・ブライ アメリカ文学 イギリス文学……2005.03.15


 このページについて

小学生の頃、初めてペーパーバックを手にする機会がありました。アルファベットが読めるか、読めないかの頃ですから、びっしりと英語で埋めつくされたページを開くと、目がチカチカするようでした。それでも、この向こうにわたしがまだ読んだことのない、何かおもしろい話があるのだ、と思うと、中にはいることを拒絶されたような悔しさと、それでいて、いつかこの向こうに自分は入れるのだ、という胸がわくわくするような不思議な感覚を味わったことをいまでもよく覚えています。

のちに、ゲオルク・ジンメルの「橋と扉」というエッセイを読んだとき、わたしが思い出したのはこのときの記憶でした。

河の両岸がたんに離れているだけでなく、「分離されている」と感じるのは私たちに特有のことだ。もし私たちが、私たちの目的思考や必要性や空想力のなかで両岸をあらかじめ結びつけていなかったとしたら、この分離概念はそもそも意味をもたないだろう。
(「橋と扉」『ジンメル・コレクション』鈴木直訳 ちくま学芸文庫)

わたしにとって、すべて英語で書かれているペーパーバックは、河の向こうの世界でした。そうして、わたしがそこから隔てられていると感じたのは、それまでにもさまざまな翻訳という「橋」を渡って、わたしは向こう岸の世界に何度も足を踏み入れていたからでしょう。そうして、その「橋」が見当たらなかったとき、初めて「分離」を意識し、向こう岸にたどりつく手段を持たない自分が拒絶されているように思ったのでしょう。

ジンメルはこう続けていきます。

橋がひとつの審美的な価値を帯びるのは、分離したものをたんに現実の実用目的のために結合するだけではなく、そうした結合を直接視覚化しているからだ。現実の世界では身体を支えるために提供している足がかりを、橋は目にたいしても風景の両側を結ぶために提供している。

翻訳が悪いとか、日本語になってない、などという言葉を耳にすることがあります。おそらくわたしたちは、翻訳されたものを読みながら、単に向こう岸に行くだけではなく、言葉を換えれば、意味が通じればいい、内容がわかればいい、という「現実の目的のため」の「結合」だけでなく、「橋」そのものも、「審美的」な目で眺めているのでしょう。そう考えていけば、堀口大学や森鴎外の翻訳が、いまなお高い評価を受けているのもよくわかるように思います。

そもそも、まるでちがうふたつの言葉です。言葉が「もの」の名前なら、英語から日本語へと単純に移し替えればすむ話ですが、言葉は「もの」の名前ではありません。
shoulder という簡単な単語でさえも、日本語と英語の指す領域はちがいます。くしゃみをしたときに英米人がかならず声をかける "Bless you." に当たる日本語はありません。野球の「ドラフト会議」や「ドラフトビール」でなじみのある "draft" という単語の意味領域をすべて日本語にしようと思えば、とてつもなくたくさんの日本語が必要になってきます。

こうしたことが指し示すのは、わたしたちは言葉によって世界を切り分け、把握し、理解しているということです。だから、言葉がちがえば、世界の見方もちがう。理解の仕方もちがう。ですから向こう岸へ渡ろうと思えば、単純に言葉を置き換えただけでは、向こうにさえたどりつけないのです。ここでの「審美的な価値」は、同時に実用的価値でもあります。

ただ、ジンメルは橋について、こうも言っています。

橋が芸術作品と異なるのは、いかに橋が自然を超えるあらゆる綜合作用をそなえていようとも、やはり自然の景観のなかに組みこまれているというところだ。
これもまた、翻訳にあてはまる。確かに鴎外の『即興詩人』など、“原作を超えた”と言われるものもありますが、そんな芸術作品としての翻訳というのは、明治という特殊な時代、特殊な環境下での産物といえるでしょう。

あくまで原作の一部であるような。なだらかで、穴がなく、向こう岸へ無事にたどりつける、まるで地続きのようにスムーズな。いま求められているのはそんな翻訳だろうし、わたしが目指すのもそんな「橋」です。

塵も積もれば、を地で行くがごとく、少しずつ続けてきたらこれだけ溜まりました。どれもわたしが読んでおもしろかったものばかり。ねえねえ、これ、読んだことある? おもしろいよ、って、そんな思いがどの作品にもこもっています。

世界には、おもしろい小説がたくさんあります。いまは何だかみんなやたら忙しくて、おもしろさを味わうより、情報が増える方をありがたがる風潮があるみたいなんですが、情報なんて手に入ったらたちまち古くなるものです。おもしろい小説は、まちがいなくわたしたちをほんの少しだけ、先に連れて行ってくれます。読む前とは同じ自分ではいられない。

橋を渡って、向こうの世界を、ちょっとだけ、のぞいてみてください。そうして、ここを足がかりに、もっと先へ行ってみてください。
あともうひとつ。穴があったら修繕しますから、どうか教えてくださいね。

2010-08-16
(※Oceansize の "Trail of Fire" を聴きながら )
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