サキ(1870-1916)はイギリスの短編作家。
サキ(本名ヒュー・ヘクター・モンロー)の経歴は、不思議なくらいオーウェルと重なり合うのですが、作品といい、問題意識といい、まったく異なるものです。個人的な資質の問題ももちろんあるのでしょうが、植民地情勢が19世紀末と、20世紀に入ってからではまったくちがっていたのでしょう。
サキの短編は、しばしばアメリカの短編作家O.ヘンリーと比較されます。最後の一点に向かってすべては用意され、わたしたちは最後であっと驚く。
それでも、O.ヘンリーは世の辛酸をなめた人の暖かさと苦みがあるのに対して、サキのそれは、もっとずっとひやりとしたものです。
◆ サキ・コレクション…… 最終改訂 2009.2.22
ここではサキの短編のなかから、vol.1「意外な結末」として「開いた窓(The Open window)」「ハツカネズミ(The Mouse)」「スレドニ・ヴァシター(Sredni Vashtar)」の三つを、vol.2「動物と人間と」として「話し上手(The Story-teller)」「博愛主義者と幸せな猫(The Philanthropist and the Cat)」「立ち往生した牡牛(The Stalled Ox)」を、vol.3として「ラプロシュカの魂(The Soul of Laploshka)」「マルメロの木(The Quince Tree)」「毛皮(Fur)」を収めています。くっきりしたストーリー展開とひねりのきいたオチを楽しみながら、人間っていうのはこうしたもんだよな、と思ったりするのがサキの楽しみ方なのかもしれません。
あらたにvol.4「闘争と人間と」として「シャルツ=メッテルクルーメ式教授法(The Schartz-Metterklume Method)」「平和的なおもちゃ(The Toys of Peace)」「ビザンチン風オムレツ(The Byzantine Omelete)」を加えました。
ひきつづきvol.5「狼たち」として、「侵入者たち」(The Interlopers)、「セルノグラツの狼」(The Wolves of Cernogratz)、「物置部屋」(The Lumber Room)、vol.6「舌先三寸」として「メスオオカミ」(The She-Wolf) 「ショック作戦」(Shock Tactics)「こよみ」(The Almanac)、vol.7「隣の不思議」として「トバモリー」(Tobermory)、「モウズル・バートンの平和」(The Peace of Mouslebarton)「七番目のひよこ」(The Seventh Pullet) も訳しています。
vol.8では「ああ、勘違い」というくくりで、「七つのクリーム入れ」(The Seven Cream Jugs)、「運命の猟犬」(The Hounds of Fate)、「返品可能で販売中」(On Approval)の三作を訳しました。思わず笑ってしまうもの、短い話なのに、あとに余韻が残るもの、サキの世界を楽しんでいただければ、と思います。
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